いよいよ法務省も決断を迫られたようで、奈良少年刑務所も廃止に向けて舵が切られた。
(下記引用部分参照)
この刑務所は、いわゆる「明治の五大監獄(横浜・金沢・奈良・長﨑・鹿児島)」のひとつとして1908年(M41)竣工され、以来100余年を経て五大監獄のうち最後の現存監獄として今日まで生き残った。
獄舎は煉瓦を用いた、パノブティコンといわれるヒトデのような放射状の建築様式で、その文化的価値は十分に高いとされる。
当Blogでも2回ほどネタにさせてもらった。(
13/07/27 15/11/10)
保存の請願が団体・学会・地元自治会・県議会から出され、法務省も他の五大監獄のようにあっさり解体するわけにもいかず、所有権を国が有したまま民間に活用させる方向のようだが、耐震性の問題もあり、今後どのような形で保存されるのか予断は許さない。
だが保存に向けて良い方向に進みそうな気配で、煉瓦栄養分摂取者としては誠に結構なことで…
毎年9月に矯正展がおこなわれてるらしいので、内部を見学するチャ~ンス!
アンテナ張っとこ!
で、ドリームランド跡地は、やっぱり新奈良刑務所になるんかぃ???
<<以下引用>>
<産経ニュース>
2016.7.28 18:26
奈良少年刑務所をホテルに 明治の建築、民間を活用 法務省
法務省は28日、明治政府が全国に建設した「五大監獄」で唯一現存する奈良少年刑務所(奈良市)を廃止し、保存・活用のために民間の事業者を募集すると発表した。重厚なれんが造りの建物は今後、重要文化財に指定される可能性もあり、複数の事業者がホテルとしての活用に高い関心を持っている。法務省は近く事業者を選定する手続きに入る。
奈良少年刑務所の建物は旧司法省技官の山下啓次郎氏の設計で明治41(1908)年に建設。屋根をドーム状にした表門や庁舎から5棟が放射状に広がる受刑者収容の舎房などが特徴。法務省によると、地元の住民団体や日本建築学会などから、歴史的・文化的な価値があるとして、保存を求める声が上がっており、ホテルとして活用が決まれば、宿泊施設不足に悩む地元のニーズとも合致する。
法務省によると、建物は老朽化のため、本年度内に受刑者の収容を停止する。
<産経WEST>
2016.8.1 23:25
奈良少年刑務所を公開 老朽化で廃止後、ホテル活用も
明治政府が建設した「五大監獄」で唯一全体が現存し、老朽化のため廃止が決まった奈良少年刑務所(奈良市)が1日、報道陣に公開された。重厚なれんが造りの建物は歴史的価値も高く、ホテルとして活用する案も浮上している。
奈良少年刑務所は、ジャズピアニストの山下洋輔氏の祖父で旧司法省技官の啓次郎氏が欧米の監獄を視察して設計、明治41年に完成した。
法務省はこの日、中央看守所や、看守所から5棟が放射状に広がる受刑者が収容されている舎房などを公開。看守所から舎房が一目で見渡せる合理的な構造の一方、天窓を多用して自然光を積極的に取り入れるなどの工夫も見られる。
建物は100年以上現役のため、れんがが欠けた所もあり耐震性も不十分という。法務省は平成28年度内で受刑者の収容を停止。国が所有権を持ったまま民間に施設の運営を任せ、活用する。
刑務所の岩本康彦総務部長は「今は静かに、円滑に役割を終えていくのが使命。愛される施設になってほしい」と話した。
== 8/18 追記 ==
<産経WEST> 2016.8.18 07:00【関西の議論】
刑務所をホテルに、古都の仰天構想…現役最古「五大監獄」の1つ、保存と観光“一石二鳥”狙う
明治に建てられた特徴的な赤レンガ建築で、現役最古の刑務所である奈良少年刑務所(奈良市)が今年度限りで廃止されることになり、歴史的な建物を生かした今後の活用法が議論されている。保存・活用にあたって民間事業者に運営権を移すことが決まっており、耐震改修を施した上で、ホテルや博物館として再生する案が浮上。特に奈良は観光地にもかかわらず宿泊施設が少ないため、ホテルへの転用を望む声は多いという。受刑者が職業訓練に取り組む理容室が一般開放されるなど「地域と共存してきた」施設として、地元では「活性化の拠点になれば」と期待。重厚な赤レンガの「監獄ホテル」が誕生すれば、話題性も抜群だが…。(山崎成葉)
国の威信かけた赤レンガ建築
奈良県庁から約1キロ北の住宅街にある奈良少年刑務所。重厚なレンガ造りが明治時代からの歴史を伝える。ドーム屋根をもつアーチ型の表門や、庁舎から放射状に5つの収容棟がのびる構造が特徴的だ。
明治政府が威信をかけ「近代化」をアピールするため旧司法省技官の山下啓次郎が設計、明治41(1908)年に「奈良監獄」として完成した。同時期には鹿児島や長崎、金沢、千葉でも監獄が建てられ、奈良を合わせ「五大監獄」といわれるが、当時の姿をとどめるのは奈良だけだ。
設計にあたり、山下は欧米8カ国で約30カ所の監獄建築を視察しており、先進的な技術や意匠が随所に取り入れられている。一貫しているのは「合理的」な設計。5棟の収容棟(いずれも2階建て、居室計515室)は中央監視所が大きなホールになっており、棟の出入り口を見渡せる造りになっている。収容棟には柱がなく、居室の端から中央監視所まで“死角”がないのも特徴だ。
中央監視所や収容棟の廊下には至るところに明かり取りの天窓が設置され、柔らかな光が入る。刑務所にこうした窓が造られることは珍しいという。法務省の担当者は「山下は『刑務所建築』と対極にある『神殿建築』の機能を取り入れた。『何か受刑者に働きかける力がある』と考えたのではないか」と推察する。
建設は大半が受刑者らによって行われたといい、丁寧な仕事ぶりが見て取れる。収容棟の壁や刑務所を囲むレンガ塀は、下方の色が濃い。これは下方のレンガに塩を多くまぜて強度を高くしているためだ。また軒下も石材で装飾し、収容棟と接続する中央監視所にはドーム屋根を施すこだわりぶりだ。
奈良奉行所から移築した江戸時代の木造の獄舎や、精神障害を患う受刑者を収容したレンガ造りの隔離病舎などもあり、「近代化の一側面を示す遺跡として貴重」と評される。
「監獄ホテル」案
しかし、こうした現役最古の刑務所は経年劣化が進み、耐震補強の必要性が指摘されていた。
そこで刑務所としては今年度限りで閉鎖し、建物については「内部を含め、建物の構造を生かした形で活用する」(法務省)方針が示された。
同省は昨年、活用策について調査を実施。担当者によると、「奈良はホテルが少ないこともあり、ホテルだと事業性が見込める」との調査結果が得られたという。
また、耐震改修には少なくとも36億円の費用がかかる見込みで、所有権は国のままで民間の資金を生かすPFI方式の採用を決定。重要文化財に指定されれば耐震改修費の半分は国が負担し、残りを運営する民間事業者が負担することになる。
これまで刑務所が重文指定されたのは旧網走監獄(北海道網走市)のみ。明治42年に火災で大半を焼失した後、45年に再建され、木造の放射状舎房が完全な形で残る。明治期の木造監獄の数少ない保存例として歴史的価値が高く、重文には今年指定された。建物は昭和58年から公益財団法人が博物館として運営、公開されている。
地域と身近に共存
全国に7カ所ある少年刑務所の中でも奈良少年刑務所は、こまやかな矯正教育で知られてきた。
昭和29年に職業訓練施設「若草理容師養成所」が開設され、本格的な職業訓練を開始。翌30年に理容科の資格取得に向けた実習の場として、「若草理容室」が開設された。
今では理容科のほか、介護福祉科や建築科、情報処理技術科など13種類の職業訓練を実施。再犯防止や社会復帰の手助けとなるよう知識や技術、資格の取得を促してきた。現在、26歳未満の初犯の男性受刑者を中心に約400人を収容(定員696人)しているうち、約4分の1が職業訓練を受けている状況だ。
今年5月には、報道関係者に職業訓練の様子が公開された。開設当初から一般にも開放されている若草理容室では、520円~1030円で顔そりや調髪などのサービスを受けることができ、1日10人ほどが来店するという。
理容科では、2年間の職業訓練を受けると理容師免許の受験が可能で、27年度は5人が合格。昨年3月に理容師免許を取得した受刑者(24)は「前向きに努力をし、社会の役に立てる人になりたい」と話す。
だが、理容室は8月末で閉鎖に。重文指定による保存・活用を求め活動してきた地元の般若寺町自治会の小井修一会長(79)は「ずっと通っている人が多く、寂しがる人もたくさんいる」と惜しむ。
長年親しんだ建物については、「特異な形の門構えと外国のお城のようなレンガ塀。威圧的な刑務所というのではなく、地域と身近に共存する関係性があり、プラスのイメージの方が強かった」と話す。
保存・活用に向けた機運を高めた一端は、住民らのこうした声にある。
ジャズコンサートも
平成26年には、保存を求める市民団体「近代の名建築 奈良少年刑務所を宝に思う会」が発足。世界的ジャズピアニストで、設計者の孫にあたる山下洋輔さんが会長に就いた。山下さんは、耐震改修後の建物でジャズコンサートを開きたいと話しているという。
また、この活動の呼びかけ人の一人で、奈良市在住の作家、寮美千子さん(60)は19年から改善指導の一環として、受刑者を対象に「詩の授業」を月1回行ってきた。
活動は、建物に魅了されたのがきっかけだったというが、当初は尻込みする気持ちもあった。しかし、「『社会に戻ったときに無事にやっていけるようになってほしい』と熱心に更生を願う職員に心を打たれた」ことで駆り立てられ、授業を続けるうち「彼らに会えるのが楽しみになり、世界観が変わった」と振り返る。
授業は9月で終わるが、同会が今後の活用策について7月末に法務省に提出した要望書では、「カルチャースクールや、困難を抱えた少年少女を受け入れ、心を癒し、居場所となるような場を設定してほしい」としている。
寮さんは「歴史ある建物だけでなく、その中で育まれてきた更生教育を継承し、成果を一般社会に還元する場としてもらいたい」と力を込める。
愛される施設に、まちの活性化に
奈良少年刑務所の岩本康彦総務部長は「『保存してほしい』との声は大変ありがたい。今後も愛される施設になってほしい」と話す。
また、保存・活用を求めて活動してきた周辺34自治会でつくる鼓阪地区自治連合会の横田利孝会長(75)は「誇るべき奈良の近代遺産。歴史を生かした形でにぎわいの施設としても活用し、まちの活性化につながれば」と期待する。
法務省は年内に事業者の公募を始め、平成31年秋ごろにも歴史的な意匠を生かした新しい施設が誕生する。